防 災
皆の合い言葉「地域は地域で守る」

災害に強いまちにするために!
令和2年2月9日(日)
綾瀬市防災シンポジウム

 令和2年2月9日オーエンス文化会館大ホールにおいて、綾瀬市防災シンポジウムが開催されました。昨年までの防災講演会の規模を拡大して自治会長連絡協議会と共催し「防災シンポジウム」として、地域の優良事例(小園自治会、綾西自治会)の発表と講演(防災アドバイザー国崎信江氏)の2部構成になりました。参加された自治会役員をはじめ600名の方々が真剣に事例発表と講演を聞き入っておりました。ホールには本年度導入された災害用風呂が展示されており、参加者からは「思っていたより大きい
ね」などの声が聞こえてきました。


 開催に当たり、古塩市長から「昨年は台風15号と19号が日本列島に上陸、襲来し全国各地に甚大な被害をもたらしました。今回の台風は今までの台風と違い、陸地に近づいても勢力が弱まらず、逆に発達しておりました。地球温暖化を象徴する現象です。これからはこのような台風が上陸することを想定した対策が必要になります。行政としては防災対策に加えて温暖化対策にも力を入れていく所存です。新年度においては車両を使った避難やペットを伴った避難者への対策なども進めていく所存です。自然災害を防ぐことはできません。しかし、地域と行政等が協力することで災害を最小限に抑えることはできます。そのためには日ごろから防災意識を高めていただくことが大切であります。本日の防災シンポジウムは『みんなで作る地域の防災力』をテーマに開催いたします。優良事例を共有していただき、地域防災力を高めていただきたいと存じます。第二部では、綾瀬市の防災アドバイザーである国崎信江氏に『地域の防災』にスポットを当てた講演を行っていただきます。」とあいさつがありました。

 鈴木自治会長連絡協会会長は「各自治会はごみ問題や災害対策など多くの課題に積極的に対応していただいております。綾瀬市には4000人の外国人が住んでおり、大規模災害が発生したときには外国人も避難所にやってきます。このとき、言葉や習慣の違いなどから起こるトラブルを避けるための対策が必要です。まずは意思疎通ができるようにすることが大切です。市と地域が連携して課題解決に取り組んで行きたいと思います。」と課題が投げかけられました。

 

優良事例紹介

(1)綾西は災害に強いまち  綾西自治会 

 綾西自治会は1500世帯(加入率82%)で、木造住宅が密集しており、高齢化率も41%(綾瀬市26%)と非常に高い地域です。綾瀬市から延焼火災の拡大地域と指定されております。しかし、高齢者が元気なまちです。これらの現状を踏まえ、過去の大地震から学ぶことで地域の課題を見つけることとしました。阪神淡路大震災(1995年)は木造住宅が密集していたため、延焼火災により、8000戸が消失してしまいました。その要因は通電火災でした。また、東日本大震災では津波、原発事故で多くの方が被災されました。この2件の大震災に共通する点は多くの高齢者が犠牲になっていることです。

 

 高齢化した綾西地区で、大規模災害が発生したときに被害を最小限に抑えるには通電火災を起こさないことです。その対策として簡易タイプの「感震ブレーカ」を導入することとしました。地域全体を火災から守るには全ての家庭に取り付けていただくこととし、大規模災害に対する危機意識の醸成を図るとともに「感震ブレーカ」の設置をお願いしました。その結果、80%の家庭で設置していただきました。そかし、これでは地域全体を守ることができないと思い、未設置家庭や非会員が多く住む集合住宅はオーナーに再交渉するなどして90%まで引き上げることができました。導入してから2年後には正常に働くかどうかの動作確認も行いました。数件の家庭で改善が必要でしたが正常性を確認することができました。
また、安否確認のための行動マニュアルを作成し正確な情報把握に向けて組織の整備も行いました。

 
いざという時の備え
☆自助は平時から危機意識を持つ☆
☆自分たちのまちは自分たちで守る☆
☆共助は強い絆から生まれる☆


(2)災害に強い地域にするために  小園自治会 

 小園自治会地域防災推進審議会の活動報告です。小園自治会は1800世帯(加入率68%)で高齢率が高く、外国人が多く、山坂もあり、道路も狭く、木造住宅密集地域であります。
災害に強い地域にするためには、現在の体制や地区防災訓練、安否確認だけで大規模災害に対応できるのかなどの論議を経て、2年前に地域防災隊を発足させ、現在は地域防災推進審議会として活動しております。
 審議会は「災害に強い地域にするための進言」「自治会長の諮問事項に対する答申」を行っております。行動の原則は「無理せず、一歩ずつ進み、やってみてダメなら元に戻る」として息の長い活動をつなげることとしております。

 
 具体的な取り組みとしては、2018年度は綾瀬市の協力を得て防災の勉強会から始め、綾瀬市が一時避難所(早園小学校体育館)にマンホールトイレを設置するに当たっては、最適な設置場所を提案するなどの活動を行いました。災害時の情報交換機能の確保を図るためのトランシーバーの導入に当たっては実証実験により正常性を確認して購入いたしました。大阪北部地震(発生2018年6月18日)によるブロック塀倒壊の教訓に基づいて地域の危険箇所の点検を行って改善につなげました。
2019年度は災害時対応行動(地震編)の見直しや避難所運営マニュアルの改善を市に問いかけるなどの活動を行いました。2020年1月からは防災ニュース(毎月)を発行し会員の防災意識の醸成を図っております。
今後の取り組みとしては、避難所を誰でも立ち上げることのできる「運営マニュアル」の導入、黄色いハンカチをより効果的に活用できるように改善する、などの活動を行ってまいります。


☆防災・減災は私が主役!☆

防災アドバイザーの国崎信江氏からは次のコメントがありました。

☆ 被害の実態を踏まえ、我がまちの課題を見つけ、効果的な対策「感震ブレーカの導入」をされているのが素晴らしい。
☆ 感震ブレーカの導入に当たって具体的な目標を掲げ「我がまちを守るには全世帯に設置してもらう」との熱意が地域住民を動かし、設置率90%を達成したことは素晴らしい。
☆ 安否確認では各人が自分の役割を理解し、迅速な情報伝達が行える体制ができていると感じさせられた。
☆ 小園自治会組織の底力を感じさせられた。「地域防災推進審議会」を設置することにより、役員の異動などにより自治会機能が半減することを防ぐ素晴らしい取り組みです。
☆ トランシーバーの導入に当たっても機能の確認や実際に拠点間で使えるかなどの確認まで行ったことは素晴らしいことです。
☆ 組織で動くと多様なことができることを実践してくれた。
☆ 地域が市と連携して活動していることは他の行政の見本です。
☆ 両自治会の取り組みの素晴らしさを実感させられました。

参加者からは
☆ 鈴木自治会長連絡協議会が「避難所での外国の方の対処方法を考えるべき」とのあいさつは、まさにそのとおりと感じました。
☆ 感震ブレーカの設置事例(綾西自治会)は木造住宅が密集している首都圏では非常に有効であると感じました。
☆ 綾西自治会は、阪神大震災の大火災の教訓をもとに「通電火災」の恐ろしさを取り上げ、「通電火災をどう防ぐ」をテーマに「感震ブレーカ」を各家庭に設置したこと、とりわけ 非自治会員の集合住宅と外国人の方にまで設置の協力をお願いしたことには驚きました。
☆ 「感震ブレーカ」の設置は小園自治会でも実施する価値が十分あると思いました。
☆ 「お年寄りが元気なまちと言われています」には、思わず「すごい」と声が出そうになりました。
☆ 高齢者が高齢者を見守ることの大切さを大事にして「まちづくり」を行っているのだなと感心しました。
☆ 発表者の方々を中心として自治会員の方や住民の方々の防災、減災への努力目標を掲げて具体的に取り組んでいる様子がよくわかった。
☆ 防災力向上のために組織を立ち上げ、今まで生かされることの少なかった地域防災リーダーの活動の場を作った。
☆ 行政との相互信頼関係を構築し、容易に修復依頼等できるような体制を築いたことは素晴らしい。
☆ 今回「防災活動」について綾西、小園とも初めてでしたが、よくテーマをまとめられ、実際の活動を分かりやすく発表していたと思います。
☆ 綾西、小園自治会ともに地震発災時の組長、区長の行動について取り上げていました、「いつ起こるかわからい震災」には欠かせない行動マニュアルだと思いました。
☆ 小園自治会の発表後の講評で、国崎先生から「防災対推進審議会を立ち上げ、防災対策を組織力で活動したことが素晴らしい」と褒められたことで防災推進審議会会長の実行力の素晴らしさを感じました。
☆ スムーズな委員会の進行と避難所運営のためのノウハウをわかりやすく講義していただきいざというときの心構えが一つ前進したように思います。
☆ 避難所運営は自治体任せではなく、あくまでも自主運営ですよという趣旨が大きな柱として感じられました。
☆ 地域における防災、減災力の向上のため、各自治会の取り組みや防災アドバイザーの方の考え方、ご努力を改めて理解させていただきました。
☆ 少しスクリーンが暗かったようにも思います。

防災講演
 テーマ「みんなでつくる地域の防災力」〜あなたとあなたの大切な人を災害から守るために〜
 講師 綾瀬市防災アドバイザー
 株式会社危機管理教育研究所 代表 国崎信江氏
 最初に国崎氏から「昨年の台風の際には千葉県木更津市に災害協定でブルーシートなどの物資応援をしていただきありがとうございました。」とお礼がありました。
本日の発表を聞いて感じたことですが、災害が発生すると長きにわたり復興活動に携わらなければなりません。くじけそうになった時に「笑顔で頑張ろう。何か足らないものはないか。」などと素直に声をかけてくれるのは顔見知りの方々です。災害対策で最も大切なことは日ごろから何でも話し合える仲間をつくることです。これが自治会活動の原点であると再確認させられました。
 本日の発表された自治会の皆さんにはもう私の講演は必要ないのではと思いますが、まだ「何から始めようか」と思っている自治会もあると思いますので「みんなでつくる地域の防災力」について講演させていただきますとのあいさつから始まりました。

講演概要は次の通りです。 
1. 災害前にすべき重要な行動
☆ 地区防災計画の作成
☆ 災害時要配慮者への対応

2. 自主防災組織の役割
☆ 法律にも位置付けられた地域における共助の基本的な行動
☆ 自主防災組織は非難の声かけ・誘導、救出・共助、初期消化、避難所運営の担い手として期待が高い
☆ 普段から要支援者名簿の作成、防災計画立案、災害対応手順の確認、役割分担、備蓄・資機材確保、防災訓練、住民への啓発活動
☆ 地域の多様な防災の担い手が必要
☆ 地区防災計画の作成
☆ 避難所運営は地域と学校が連携して実施

3. 地域防災の課題解決のコツ
☆ 組織づくりで行動の役割を分担☆ 地域防災に参加する人材の育成
☆ 防災活動は楽しく
☆ 訓練やイベントは効果的に実施

4. 避難所運営の課題 
☆ トイレは女性や高齢者、こどもへの配慮を
☆ 大量の情報を機能的に掲示する工夫
☆ 避難所生活での衛生対策
☆ 洗濯機や手洗い場の給水および排水
☆ 避難所における要配慮者の対応
☆ 段差、隔離、設備の使い勝手、医療用電源の確認などの環境対策
☆ 食事(アレルギー、流動・離乳食、宗教等)
☆ 着替え、オムツ変えなどの生活環境の整備
☆ 避難所利用ルールの作成
  風呂やシャワーの設置と利用ルールの作成
☆ 避難所では住民による自炊の推進
☆ 避難所では住民の自主運営および女性の主体的な参画が重要

5. 外国人対策の取り組みを
 2020年はオリンピック・パラリンピックの関連もあり多くの外国人が来ます。この機会に外国人対応を優先して取り組んでもらいたい。
☆ 災害時に役立つ翻訳アプリの活用
☆ 観光庁の外国人災害時安全対応策の活用

この他に初動対応を確実にするファーストミッションボックスの導入の説明がありました。被災地を実地体験して得た知識を織り交ぜて分かりやすく解説してくれました。

講演終了後に綾瀬市から、ファーストミッションボックスの導入は準備中であり令和2年度から実施の予定である旨の追加説明がありました。

災害に強いまちにしよう


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